債権回収の時効と中断措置をとる際の注意点とは?

債権回収における時効とは

債権回収における時効とは、一定期間が経過することで、債権の行使が法律上認められなくなる制度のことをいいます。時効によって、債権者は債務者に対して法的に支払いを求める権利を失い、債務者はその債務を履行しなくてもよい状態になります。この制度は、法的安定性を確保し、長期間の放置による不公平を防止するために設けられています。

時効をカウントするタイミング

時効は、債権が行使可能となった時点からカウントされます。例えば、債権が発生した時点や支払期限が到来した時点がその起算点となります。また、貸金債権の場合においては貸付金の返済期限から、売買代金債権の場合は商品引渡し日から、サービス提供に対する報酬債権の場合はサービス完了日から時効がカウントされ始めます。

消滅時効の時効期間例

下記の通り、消滅時効は債権の種類によって異なるため、それぞれの債権の種類を把握し、適切な行動をとる必要があります。

旅館・飲食店などの料金:1年

生産者、卸売、小売商人の商品代金:2年

弁護士報酬など:2年

病院の治療費:3年

不法行為に基づく債権:3年

商取引で生じた債権:5年

債権回収の時効停止に伴う時効中断措置・更新措置の方法

時効のカウントを停止し、債権を保護するためには、下記のような時効中断措置または更新措置をとる必要があります。

所有者に対して訴訟を起こす

時効を中断するための最も確実な方法は、債務者に対して訴訟を起こすことです。訴訟を起こすことにより、裁判所に訴状が受理され、時効が中断されます。この方法は、訴訟の結果に関わらず、訴状の提出自体で時効が中断されるため、非常に有効です。しかし、訴訟を起こすには時間と費用がかかるため、事前に十分な準備と検討が必要となってしまいます。

また、訴訟を起こす際には、債権の存在を立証するための証拠を十分に揃えておかなければなりません。訴訟がスムーズに進行するように、契約書や取引記録、支払い履歴などの証拠書類を整理して準備する必要があります。

所有者に支払督促をする

支払督促とは、裁判所を通じて債務者に対して支払いを求める手続きのことです。この方法は、簡易的な手続きで申立てを行うことができ、裁判所が支払督促を発した時点で時効が中断されるため、通常の訴訟に比べて迅速かつ低コストで済みます。

また、支払督促を行う際には、債権の金額や内容を明確に記載し、必要な書類を提出する必要があります。支払督促が債務者に送付され、債務者が異議を申し立てなければ、督促が確定し、強制執行の手続きに進むことができます。債務者が異議を申し立てた場合には、通常の訴訟手続きに移行します。

所有者への民事調停申し立て

民事調停とは、裁判所の調停委員会が仲介して当事者間の紛争を解決する手続きのことです。調停の申し立てを行うことで、時効は中断されますが、調停が成立しなかった場合でも、調停の申立て自体が時効中断の効果を持ちます。調停は、当事者間の合意による解決を目指すため、訴訟に比べて柔軟性があり、当事者同士の良好な関係の維持にも効果があります。加えて、調停は非公開で行われるため、当事者間のプライバシーが守られ、円満な解決を図ることができます。

調停を申し立てる際には、債権の内容や背景を詳細に説明し、調停委員会に適切な解決策を提案する必要があります。

所有者に債務を承認してもらう

債務者が債務を承認することでも時効は中断されます。債務承認には、口頭での承認、書面での承認、債務の一部支払いなどが含まれ、具体的には「債務者が債務の存在を認める内容の手紙を送る」、または「電話で債務の存在を確認する」などの行為が該当します。この場合には債務者の承認が時効の中断条件に該当し、新たな時効期間が開始されます。

債務者に債務を承認してもらう際には、できるだけ書面での承認を得ることが望ましいです。書面での承認は証拠として非常に効果的で、後々の紛争を防ぐことができます。

所有者に債権の一部を弁済してもらう

債務者が債権の一部を支払うことでも時効は中断されます。部分的な支払いでも、債務の存在を認めたことになるため、時効はリセットされ、新たな時効期間が開始されます。債務者に対して支払いを求める際には、部分的な支払いでも効果があることを説明し、債務者が応じやすい形での解決を図ることが重要です。

部分的な支払いを受ける際には、支払いの記録をしっかりと残す必要があります。支払いの領収書や振込明細などを保管することで、債務の存在を明確に証明できるようにします。

消滅時効が成立した後に債権を回収する方法

もし仮に時効期間が満了してしまった場合においても、必ずしも債権回収ができなくなるわけではありません。時効期間が経過しただけで債権が即座に消滅するわけではなく、債務者が時効を主張することで初めて消滅時効が成立します。

さらに、時効を主張される前に債務者が債務の存在を認めた場合には、状況によって債務者は消滅時効を主張できなくなる場合があります。このため、時効期間が過ぎたとしても、債権回収を完全に諦める必要はなく、場合によっては債権を回収できる余地が残されています。

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