能力不足の社員への対応方法とは?解雇を検討する前に企業が知っておくべきこと

企業における能力不足社員の問題は、企業の成長や業務の効率性に大きな影響を及ぼす可能性があり、「退職してほしい」、「解雇をしたい」とお考えの経営者様も多くいらっしゃいます。しかし、従業員をいきなり解雇することは非常に難しいため、解雇をする前に適切な手順を踏む必要があります。そこで今回は、能力不足の社員への対応手順や解雇を検討する前に企業が知っておくべきことについて解説します。

能力不足・ローパフォーマー社員とは

能力不足社員とは、会社が求める業務レベルに到達していない社員のことを指し、ローパフォーマー社員とも言います。ひとえに、能力不足と言ってもいくつかのパターンに分けることができ、業務を遂行するスキル・知識が乏しいケース、業務へのモチベーションが低いことで、会社が求めるパフォーマンスを発揮していないケースが挙げられます。どちらの分類にせよ、このような社員が在籍していることで、組織の雰囲気が悪化したり、生産性が下がることで業績が低下する恐れがあります。

能力不足・ローパフォーマーの例

業務を遂行する能力が不足している

会社が与える業務を遂行するためのスキル・知識が不足しており、一般的な業務を任せることが難しいケースです。もちろん、新入社員や他業種からの中途入社社員であれば、入社直後はスキル・知識が不足していることがほとんどですが、入社後一定期間が経過した後も、成長が見られない、成長意欲が無いために、会社が求める能力に一向に到達しないケースもあります。したがって、ただ能力が不足しているというより、会社が求める能力に到達する見込みが無い社員という表現がより適切なニュアンスになるかと思います。

ローパフォーマー、仕事に対する態度が不良

ローパフォーマーの社員は積極的に仕事に取り組むことがなく、上司から指示された最低限のことしか取り組まないことが特徴です。上記の能力不足の例と異なり、業務を遂行する能力は保有するものの、与えられた業務における最低限の内容のみ行います。また、仕事に対する態度が不良である社員は上司のアドバイスを聞かない、理解しないなどといった特徴があります。

能力不足・ローパフォーマー社員の対応方法

能力不足・ローパフォーマー社員の対応方法として、主に以下の内容が挙げられます。

試用期間の延長

能力不足の社員は、新しく入社したケースが多いため、試用期間の延長を検討することが多いです。就業規則に試用期間を延長する可能性がある旨、延長理由、延長期間等が記載されており、また採用する際に試用期間を延長する可能性があることについて、双方の合意が成立していれば、試用期間の延長を実施することが可能となります。入社直後であるために判断が難しい場合は試用期間を延長し、社員に問題があるのか、育成環境に問題があるのかを把握するようにしましょう。

上司による注意指導

能力不足社員に対して何も改善を促す指導をしていない場合は、上司が指導を行い、改善を図りましょう。「会社として注意や指導を行い、改善を図った」という事実が後々重要となるため、放置することは控え、改善してほしい事項を社員に通達する必要があります。また、注意指導を行う際は、会社が実施した証拠として残せるように、「いつ」、「誰が」、「どのような」指導を実施したのか、記録を残す必要があります。そうすることで、解雇の有効性を裏付ける理由となりますので、適切に管理しましょう。

部署移動・配置転換の実施

能力不足社員に対して注意・指導を行ったとしても改善が見られない場合は、部署移動・配置転換を検討しましょう。現在の部署における業務と当該社員の相性が悪い可能性があるからです。ただ、配置転換を行うためにはいくつか条件があり、就業規則に予め実施可能である旨を記載しているかどうか、業務上の必要性があるかどうか、社員に対して著しい不利益を与えていないか等を検証する必要があります。したがって、部署移動・配置転換を検討される際には弁護士にご相談されることを推奨いたします。

退職勧奨

会社として注意指導を実施し、部署を移動させたとしても、改善が見られない場合は自主退職をしてもらうための退職勧奨を行います。退職勧奨の方法の詳細は省略いたしますが、適切な方法・手順で進めなければ、後日退職を強要されたとして訴えられる可能性がありますので、慎重に進める必要があります。退職勧奨を行う際に、これまでの注意指導の記録等の会社が改善を図った証拠が重要となりますので、「退職勧奨を行いたいが、注意指導の記録を残していない」という場合は、まずこれまでの実情を整理する必要があります。

解雇

これまでのステップを踏んだうえで、ようやく「解雇」という手段を選択することができるようになります。解雇をするための要件は主に2つあり、「客観的かつ合理的な理由」、「社会通念上相当であること」が挙げられます。つまり、解雇をする理由があり、解雇という処分が妥当であるかどうかが問われるということです。こちらの判断は、専門家でないと難しいため、むやみに解雇という選択肢を選ばないことが重要です。もし、安易に社員を解雇してしまうと、不当解雇であるとして訴えられるケースも往々にしてあるため、注意する必要があります。

能力不足・ローパフォーマー社員の対応は弁護士にご相談を

能力不足の社員は、ハラスメントを行う社員や、無断欠勤や遅刻を繰り返すような社員と異なり、実際に悪影響を及ぼしていることが明確にならないことで処分をすることが難しいという特徴があります。したがって、解雇を検討している場合は慎重かつ段階的に対応する必要があるため、会社としては長期的に対応することが求められます。さらに、直接能力不足社員に注意指導等の対応をする社員の精神的負担は非常に大きく、能力不足社員の影響で周囲の社員が退職する恐れもあります。

当事務所では解雇の有効性やリスク判定、社員への注意指導の書面作成、アドバイス等を行っております。お困り事がございましたら、早期にご相談されることをお勧めいたします。

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