労働組合・団体交渉の対応が必要になった

労働組合・合同労組(ユニオン)に団交を申し込まれたら

 

労働組合からの団体交渉(団交)の申し入れは、ある日突然「団体交渉申入書」「要求書」といったタイトルの書面が、会社の代表宛てに郵送(またはファクス)されてくることがほとんどです。

場合によっては直接会社に押しかけて書面を手渡ししてくることもあり、多くの会社経営者の方々はこのような状況に、驚きのあまり適切な対応をとることができず、労働組合側の言いなりになってしまい、要求をすべて受け入れてしまうのみならず、最悪の場合には、その後の会社経営に労働組合に介入されることになるなど、会社経営に多大な悪影響を及ぼしてしまいます。

また、労働組合に対する生理的な嫌悪感から、いきなり団交を拒否したり、「誠実な対応」をせず、いたずらに紛争を悪化させることにより、交渉が長期化・複雑化したあげく、「不当労働行為」をなしたとみなされて経済的にも社会的にもダメージをうける場合もあります。

しかし、労働組合から団交の申し入れが突然なされたとしても、慌てず焦らず落ち着いて対応すれば決して怖いものではありません。

まずは相手を知り、相手に揚げ足をとられないよう「誠実な対応」で交渉をすすめ、相手の要求を正しく把握し、要求に対して適切な対処をすればよいのです。

ただし、日々忙しく活動なさっている会社経営者の方々には、労働組合の団交に対して多くの時間を割くことが難しいと思います。ましてや相手は労働問題のプロ中のプロです。付け焼刃の知識では対抗できないおそれもあります。

ぜひ、トラブルに発展する前に労働法に詳しく、労働組合との団交の経験も豊富な弁護士にご相談下さい。労働分野の取り扱い経験豊かな弁護士の助言・助力を得ることは、会社経営者の方々にとって非常に有益です。

 

以下、労働組合から団交を申し入れられた場合のポイントを説明致します。

 

  • 労働組合とは

日本の労働組合は大きく分けて5つに分類できます。大まかに説明しますと、

・職業別労働組合(同一職業の労働者が広い地域で組織する労働組合)

・産業別労働組合(同一産業に従事する労働者が加入する大規模の労働組合)

・企業別労働組合(特定の企業で働く労働者が組織した労働組合)

・地域一般労組(合同労組、ユニオンとも呼ばれ、一定地域において企業や産業に関係なく合同して組織化された労働組合)

 

日本の労働組合の約90パーセントは、企業別労働組合なのですが、近年トラブルが急増しているのが、地域一般労組(合同労組・ユニオン)です。

企業外で組織されているため、団体交渉を申し入れられた企業にとっては、「どこのだれかも(正当な団体なのかどうかさえ)分からない」団体に突然おしかけられ、問題を吹っ掛けられたとしか感じられず、適切な対応をとれずにトラブルに発展することが多いのです。

 

労働組合には様々な団体があります。交渉の相手方となる労働組合がどのような労働組合なのか、金銭的解決を重視するタイプの労働組合なのか、使用者に反省を求めることを重視するタイプなのか、労働環境の変更を主に求めてくるタイプなのか…そこを把握しておいた上で団体交渉に臨むか否かでは、交渉の結果にも大きな影響が生まれてきます。

労働分野に関する経験豊かな弁護士は、そういったデータ収集を得意としておりますし、豊富なデータの蓄積もあります。そういった知識を利用できることも、会社経営者の方々が弁護士にご相談するメリットです。

 

  • 不当労働行為とは

日本国憲法において労働者には「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」労働三権が認められており、これは使用者よりも弱い立場にある労働者を、使用者と対等な立場に立たせるために労働者に与えられた権利です。

 

団結権=労働条件の維持や改善のために使用者と交渉するために、労働者が 団体を作ったり、参加する権利

団体交渉権=労働者の団体が、労働条件について使用者と交渉する権利

団体行動権=労働組合としての活動を行なったり、必要に応じてストライキなどの争議行為を行う権利

 

この権利を保障するために、労働者には、組合活動を理由として国家により刑事罰を科されない(刑事免責)、使用者から損害賠償などの責任追及をなされない(民事免責)ことが認められています。

しかしそれだけでは、労働三権の実効性の保障には足りませんので、労働者の労働基本権を侵害する使用者の行為を「不当労働行為」として禁じることにより、労働者の権利を保障しているのです。

 

不当労働行為は大きく分けて3つに分類されます。

労働組合の組合員であることを理由に、労働者に不利益な取扱いをしてはいけない(労組法7条1号)

正当な理由なく団体交渉を使用者が拒否してはいけない。また、団体交渉に応じても誠実なものでなかった場合、団体交渉の拒否とされます(労組法7条3号)

労働組合活動等に使用者が干渉し、その活動を骨抜きにするようなことをしてはいけない。支配介入(労組法7条3号)

 

使用者の個々の行為が、この不当労働行為に当てはまるのかどうかの判断はなかなか難しいものです。使用者側には労働者の権利を侵害するつもりはなかったのに、労働者側に「不当労働行為」だと受け取られ、交渉がスムーズにいかなくなることもあります。

弁護士にご相談頂ければ、法律的・社会的に見て、また今まで積み重ねられた数々の判例に照らし合わせての判断を致します。「不当労働行為だ」と労働組合側からの反発を受けずに、スムーズに交渉を進める対応についてのアドバイスが可能です。

早期に有効な対策をすることが、その後の交渉の行方を左右するのです。

 

  • 団交を拒否する「正当な理由」とは

労働組合からの団体交渉の申し入れがあった場合、それは憲法に保障された権利に基づくものであるため、使用者は正当な理由がない限り拒否することができません。また、誠実に応じる法的な義務もあります。

「正当な理由」があれば団交を拒否できるのですが、この「正当な理由」があると、労働者委員会や裁判で認められることは極めて稀です。ましてや、申入れがあって一度も団体交渉を行わずにすむということはありません。

労働組合から団体交渉を申し入れられた場合、頭から拒否するのではなく、どのように適切に対応して、この降りかかった火の粉を振り払うのか、相手方の要求を必要最低限に済ませるのか、初めから対策を講じることが大切です。初手から積極的に対応することが、交渉を有利に行うことにつながるのです。専門家である弁護士の意見をまず聞いておくことは、企業側にとって先手必勝の策となります。

 

以下、参考までに「正当な理由」としてよく主張されるが、「正当な理由」に当てはまらない事項について説明します

・元従業員は、現に「使用者が雇用する労働者」に当たらないから、元従業員を代表する労働組合とは団体交渉を行わない。

←元従業員も労組法上の「労働者」に含まれる可能性があり、それを支持する判例も存在します。「正当な理由」とは認められないでしょう。

・雇用契約ではなく、業務委託契約や業務請負契約の形で契約をしているので、「労働者」には当てはまらない

←実質的な契約内容や実態から労働者性が判断されます。契約書の題名が何であれ、一概に「労働者」には当てはまらないとは判断できません。

・合同労組(ユニオン)は企業外の組織であり、「使用者が雇用する労働者の代表者」に当たらないので、団体交渉を行わない。

←企業外で組織されていても労組法上の「労働組合」に該当します。

・裁判になっている案件だから、重ねて交渉を行う必要はない。

←裁判所に案件が継続していても、法廷外で話し合うことにより紛争が解決する余地があります。裁判が係属していることは団体交渉の妨げになることはなく「正当な理由」に当たりません。

 

などなど、「正当な理由」がこちらにあると勝手に判断し、団体交渉を拒否した結果、交渉が長期化・複雑化し、結局不利益を被ったという案件も数多く存在します。適切な判断・対応が必要です。思い込みや間違った知識に基づいて行動する前に、まずはお気軽に専門家にご相談下さい。

 

  • 団体交渉までに準備すること

・「団体交渉申入書」に記載されている内容の精査

団体交渉申入書には、労働組合名、交渉内容、交渉日時、回答期限など重要な情報がすべて記載されています。

生理的に受け付けない…などの理由できちんと読まないでいると、初手から打つ手を誤ります。

どのような性質の労働組合なのか、

交渉内容は何か、

交渉の日時、場所は適切か(日時や場所も交渉の余地があります。変更を申し入れることが可能です)、

回答期限は適切か(あまりに短い回答期限であれば、常識の範囲内で延長を申し入れることが可能です)

団体交渉申入書を読み込み、「誠実な対応」を心掛けることにより、こちらに有利な交渉に持ち込むことも可能です。ぜひ、社外の参謀役として弁護士をご利用下さい。

弁護士は団体交渉の対策として、以下のような事項について経営者の方々と事前に打ち合わせを致します。

不当労働行為に関する注意

労働組合の提示する交渉内容の争点はなにか

それに対して会社側としてどう対応するか

会社側のアクションに対して予想される労働組合側からの反論とそれに対する対応

解決に向けての交渉参加者のスタンスと全体の流れのシナリオ

 

具体的な交渉内容に応じた準備

労働組合が団体交渉を申し込んできている内容は何でしょうか?

その内容に沿って準備をして団体交渉の場に臨まないと、準備の不備を労働組合側に指摘され(相手は海千山千の交渉のプロです)、こちらの主張を十分にすることもできなくなる恐れもあります。

 

(解雇の場合)

客観的に合理的な理由があり、社会通念上の相当性を備えていることを証明する必要があるので、就業規則のどの解雇事由にあたるのか、社内や同業種の会社での取り扱いがどのようであるか、等の情報を収集して検討しておくことなどが必要になります。

→解雇の有効性については、労働関係の法律や判例に精通している弁護士にご相談いただければ、その解雇のケースが裁判になった場合、最新の判例や法令に照らしあわせて有効か無効かのアドバイスができます。

その判断に基づいて、組合側との交渉時にどのようなデータが必要で、相手方を説得するためにどのような提案をすれば効果的か等、具体的な方策もご提案できます。

 

(未払い賃金(残業代等)の場合)

時間外労働の有無、時間外労働の時間の確定をする必要がありますので、社内のタイムカードやシフト表、営業時間、PCの使用状況のデータ等、手に入る限りのあらゆる情報を駆使して、実態を明らかにしないといけません。

労働組合側に「使用者には自社の労働者の勤務時間を正確に把握している責任がある」と指摘されて非難を受けることを避け、スムーズに交渉を進めるためにも正確な情報の収集が必要です。

また、常日頃から労務管理を徹底しておけば、労働者との間での紛争も避けられますし、問題が生じた場合にも、適切な対応をとることができます。

交渉に必要なデータの収集、開示する情報の取捨選択に関しても弁護士がご相談に応じます。また、転ばぬ先の杖として、就業規則や労働契約書の作成・見直し等の貴社の労務管理のアドバイザーとしてもお手伝いが可能です。お気軽にご相談下さい。

 

(パワハラ・セクハラ等ハラスメントの場合)

パワハラ、セクハラといったハラスメントが実際に存在したのか、またその内容がどのようなものであったのかの事実認定が重要なポイントになります。社内での調査が必要となりますが、被害者・加害者双方ともにプライバシーにも関わってくることなので、非常にデリケートな取り扱いが必要です。

粗雑な調査がより紛争を大きくしてしまうこともありうるからです。

どのような経緯でハラスメントを訴えられたのか、事実関係を正確に把握し、労働組合との交渉に臨むことが、早期解決への近道です。

ただ、当事者への聞き取り調査を行うとしても、当事者の方々が社内の関係者には話しにくいことも多く、調査が進まない場合もあります。そこで、社外の第三者として弁護士をご活用頂ければ、情報の収集に資する場面も多いと思います。

関係者から情報収集をしつつ、情報を整理し、対策を講じることも可能です。

早期に適切な解決策を探る上でも、会社経営者の方々のみならず、労働者の方々からの観点から見ても、弁護士が介入することのメリットは大きいと考えられます。

 

  • 団体交渉の席では

使用者には誠実に団体交渉に応じる義務があります。具体的には、

・労働組合の要求や主張に対して回答に応じる

・必要に応じて回答の根拠となる資料を示す

・合意達成の可能性を模索する義務がある

ということです。

 

一方的に団体交渉を申し入れられて不快に感じる部分もあるでしょうが、紛争を早期に解決する場だと理解し、団体交渉をうまく利用して紛争を解決することが、会社のためにも関係者のためにも一番よいことです。

但し、「誠実に交渉する義務がある」ということは、労働組合側に譲歩しなければならないということではありません。労働組合側からの要求に応えられないのであれば、その理由と根拠を示して労働組合側との交渉に応じればいいのです。ただ、海千山千の交渉のプロである労働組合と直接交渉を継続して行うことは、日々多忙な会社経営者の方々にとって負担の大きいことだと思われます。

経営者側のちょっとした発言について揚げ足をとられ、話し合いが紛糾し、結果として交渉が長期化・複雑化する恐れもあります。

そこで、法律の専門家であり、交渉のプロである弁護士が会社側代理人として交渉に臨むことは、経営者の方々の負担を軽減し、労使双方にとっても、合理的かつ有意義に話し合いを進められるというメリットがあります。

 

団体交渉の席に交渉のプロである弁護士を同席させることは、交渉をスムーズに進めるために大変有用です。

 

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