協調性がない問題社員への適切な対応とは?
協調性が欠如している問題社員とは?
「協調性がない」といわれる問題社員には内容や程度、様々存在するため、まずは全体像を理解する必要があります。「協調性がない」とされる人には以下のような特徴が挙げられます。
コミュニケーションがとりにくい
同僚や上司との対話が不足しているなど、必要な情報を共有せずに自分一人の判断で動いてしまうことが多く、社内の連携を乱してしまう場合があります。
チームワークを意識しない
チームの一員としての役割を果たさず、自分勝手な行動を取ることが多くなりがちです。その結果、チームの目標やプロジェクトに対する貢献度が低くなり、他のメンバーへの負担が大きくなります。
態度が反抗的である
自分の意見や方法に固執して他人の意見を聞き入れないため、上司の指示や同僚の意見に対して反抗的になり、従わない場合があります。
組織、部署、他従業員に対するネガティブ思考
仕事に対して不平不満を持つことが多く、職場の雰囲気を悪くする発言や行動を取ったり、他人の成果や努力を認めず、批判的な言動を繰り返したりするため、周囲のモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。
約束を守らない
約束や締め切りを守らないことが多かったり、他人の信用を無下にする行動をとったりするなど信頼を裏切る行動を取りがちなため、職場内での信頼関係が崩れてしまう傾向があります。
協調性欠如と解雇について
ここまでで、「協調性が欠如している問題社員」について解説させていただきましたが、ここからは皆様が最も疑問に思うであろうこと、「協調性がないことは解雇理由にできるのか」についてご説明させていただきます。
協調性が欠如していることを理由とした解雇可否
一般的に、企業は目的に従って業務を遂行するべく、たくさんの従業員を雇用、組織化しています。また従業員は労働契約に基づいて、他の従業員と協力して業務に従事する義務があるため、この義務を果たさない場合には、労働契約違反となり、解雇理由に該当することがあります。
協調性欠如を理由に解雇することができる要件
解雇理由が認められるかどうかは、どの程度協調性が欠如しているか、解雇に至るまでの業務指導・改善状況によって異なります。
解雇事由として認められやすい事例
業務命令違反や、上司・同僚に対する反発、さらには顧客とのトラブルといった具体的な問題を詳細に立証できる場合に関しては、解雇事由として有効と判断される可能性が高くなります。しかしこの場合については、該当する行為がどのように業務に支障をきたしたか、または職場環境を悪化させたかについて具体的な証拠や証言が求められることがあります。
また、上記のような従業員に対して、勤務態度改善のための指導を続けても改善が見られない場合には、その従業員に非があると認められやすいです。この場合においても、解雇事由の正当性を証明するために、企業は従業員に対して適切な指導を行い、改善の機会を提供したという証拠を提示することが必要となります。
解雇事由として不十分な事例
解雇事由が曖昧であったり、合理的な根拠が欠けていたりすると、解雇の正当性が疑われることがあります。特に、解雇に至るまでの企業の対応が一貫していない場合や、従業員に非があると明確に示せない場合には、解雇無効と判断されやすくなります。従業員の行動が問題であったとしても、それが解雇に値するかどうかの判断は、企業の対応が適切であったかどうかに大きく依存します。さらに、業務指導などによって勤務態度改善の余地があるにもかかわらず、企業が初めから退職を前提とした対応を取ると、解雇が無効とされる可能性が高まります。
また、退職勧奨がパワーハラスメントだとみなされる場合には、解雇の正当性が否定される可能性があるため、まずは改善のための指導や教育を行い、それでも改善が見られない場合に初めて解雇を検討するという手順を踏む必要があります。
協調性がない問題社員への具体的な対応方法
業務改善指導を記録する
協調性のない社員への対応の第一歩として、業務改善指導を行うことが重要です。該当社員に対して、問題の具体例を挙げ、協調性の欠如が業務にどのような影響を与えているかを明確に説明します。その上で、期待される行動や具体的な改善策を提示します。また、定期的なフィードバックや評価を通じて進捗を確認し、必要に応じて追加の指導を行うことで継続的に業務改善指導をしているという根拠にもなります。
裁判等になった場合には、使用者側がどのくらい注意指導を行っていたかが非常に重要な点となってくるため、しっかりと記録に残しておく必要があります。
程度が軽い懲戒処分の実施
業務改善指導では効果がみられない場合には、次のステップとして軽度の懲戒処分を検討することが効果的です。該当社員に、口頭注意や書面による警告、減給、停職などの処分を通じて、問題行動にたいして改善が求められていることを認識させることができます。ただし、懲戒処分を行う際には、必ず法的な手続きを遵守して適切な理由と証拠に基づいて行わなければなりません。
配置転換や公職の実施
1や2に取り組んでも問題社員の勤務態度に改善が見られない場合には、配置転換や降職を検討することも必要になってきます。該当社員の能力や性格に適したポジションに移動させることで、より良いパフォーマンスを引き出すことができる可能性があります。
例としては、個人作業が多い部署に配置転換することで、チームワークの必要性が低い環境での業務遂行を促すことができます。また、降職の場合は責任範囲を減らし、該当社員のストレスやプレッシャーを軽減することで、業務態度の改善を図ることができ、社員の能力を最大限に引き出しつつ、業務環境全体の調和を保つことができます。
協調性欠如の社員への退職勧奨のタイミングと注意点
退職勧奨とは企業から従業員に対する「強制を伴わない退職の働きかけ」のことをいい、業務改善指導や懲戒処分など、先に述べたような他の手段で効果を得られなかった場合に検討することができます。具体的には、複数回の改善指導を行ったにもかかわらず協調性の問題が解決されない場合や、職場環境や他の従業員に深刻な悪影響を与えている場合が考えられます。
注意すべき点としては、退職勧奨は社員に対して圧力をかける形で行ってはならないということです。退職勧奨は、法律として規制してはいないものの、過去の裁判例上、該当社員が明確に退職勧奨を拒否したにもかかわらず何度も退職勧奨を行った場合には、実質的な退職強要にあたるとして違法とみなされ、企業側が損害賠償責任を負う可能性があります。パワーハラスメントとみなされるリスクを避けるためにも、退職勧奨を行う際には、具体的な理由を説明し、社員が納得できるよう丁寧に対応する必要があります。
また、業務態度改善指導について前述したのと同様にように、後に法的な争いとなった場合に備え、企業が適切な手続きを踏んだことを証明するため、退職勧奨に関する記録も詳細に残しておくことが重要となります。
退職勧奨を進める場合には、これらの注意点を踏まえた上で、慎重に取り組む必要があります。
協調性欠如の問題社員を解雇する前に弁護士に相談すべき理由
従業員解雇に関する法律や規制は非常に複雑なため、弁護士に依頼することで該当の解雇が法的に正当であるかを評価し、訴訟リスクを最小限に抑えることができます。また、協調性欠如などの理由で従業員を解雇する場合には、十分な証拠が必要ですが、弁護士はどのような証拠が必要か、収集・管理の方法をアドバイスしてくれます。加えて、トラブル予防の観点からも、解雇に関する問題が発生した場合には、弁護士が事前に関与していると迅速に対応できるため、問題の深刻化を防ぐことができます。
このように、問題社員を解雇する前に弁護士に相談することは、法的なリスクを回避し、適切な手続きを踏むために非常に有効な手段であるといえるでしょう。
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