パワハラ・コンプライアンス

パワーハラスメントを防止するためには

タレントのいわゆる「闇営業問題」に端を発した吉本興業のパワハラ問題。
闇営業に関係したタレントが記者会見を開いて、内情を明らかにしようとしたところ、会社のトップである代表取締役に密室で叱責され、「録音してないだろうな」、「(会見を行ったら)全員クビにする」、「自分にはその力がある」等の発言で会見を開くことを止めさせ、闇営業問題について隠ぺいを図ろうとしたことが問題となっています。
この吉本興業のトラブルでは、伝統的な家父長主義の企業体質が問題の根底にあると思われます。
タレントらを叱責してパワハラを行ったとされる吉本興業の社長も、その記者会見で、「身内の意識で家の中で怒っている感覚しかなかった」とコメントしており、「社員は家族、経営者はその父親的存在」だとする吉本興業の伝統的な家父長主義の経営体制が見受けられます。
こういった企業体質の下では、パワハラが行われても当事者にそれが悪いことだという自覚がなく、むしろ教育や指導の延長として善意で行っている場合が多く、パワハラの温床になる恐れがあります。
パワハラを放置すると、今回の吉本興業のトラブルのようにメディアが報道したり、SNSへ投稿されたりして会社の不祥事が世間に広まってしまう恐れがあります。そうなると、企業イメージやブランドが損なわれ、会社の経営にも多大な悪影響を及ぼします。最悪の場合は企業の存続にも影響が生じます。
社内でパワハラが行われた場合に、適切な対応をして鎮火にあたることは当然のこととして、パワハラ防止のため、会社内に労務コンプライアンス体制を構築することが、これからの企業経営には必要不可欠だと思われます。
以下、パワハラの定義と、パワハラを防止するためのコンプライアンス体制の構築について説明致します。

① パワハラとは(定義と類型)
② パワハラを放置した場合どうなるか
③ 企業におけるパワハラ防止対策
④ コンプライアンスとは
⑤ コンプライアンス違反を放置するとどうなるか
⑥ コンプライアンス体制の構築とそのメリット

① パワーハラスメントとは

職権などのパワーを背景にして、本来の業務の適正な範囲を超えて、継続的に人格や尊厳を侵害する言動を行い、就労者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与える行為のことです。
パワハラが成立する要素として下記の3つの定義があります。
① 職場の地位、優位性を利用していること
上司・先輩が対象として考えられますが、同僚や部下であっても場合によっては対象に含まれる場合があります。「職場内での優位性」には「職務上の地位」だけではなく、人間関係や専門知識など様々な優位性が含まれると解されるからです。
② 業務の適正な範囲を超えた指示・命令である
業務の適正な範囲を超えている場合に限り成立します。つまり、一般的に業務として行われるべき内容であればパワハラには当たりません。
③ 相手の人格や尊厳を毀損する発言や行為が継続的にあり、職場環境が害されていること。
大声での叱責はパワハラと判断されるケースがほとんどですが、たまたま1回だけ大声で叱責した、といった場合にパワハラだと認められない場合もあります。
パワハラの類型としては、
① 身体的侵害→殴る、蹴る、突き飛ばす、立たせるなど
② 精神的侵害→脅迫、名誉棄損、暴言、違法な退職強要など
(正当な叱責でも方法を間違うと違法性を生じる場合がある)
③ 人間関係からの切り離し→無視、隔離、仲間外れなど
④ 過大な要求→達成不能なノルマを課すなど
⑤ 過小な要求→程度の低い単調な作業を与え続けること
⑥ 個の侵害→プライベートな内容に過剰に踏み入る行為
の6類型があげられます。

①の身体的侵害は言うまでもありませんが、②~⑥については、加害者や職場内にパワハラであるという認識がなく行われている場合も多々あり、注意が必要です。

② パワハラを放置した場合どうなるか

パワハラとは、社会的な地位の高い者が、自らの権力や立場を利用して行う「嫌がらせ」のことなのですが、その内容によっては、パワハラの加害者は、暴行、傷害、名誉棄損、侮辱罪等の刑事責任を問われる可能性があります。
また、民事上も、不法行為責任により損害賠償請求や慰謝料請求をなされる場合や、労働契約違反が成立する場合もあります。
なお、加害者を雇用している企業がパワハラを放置した場合、労働契約上の職場環境調整義務違反に問われ、加害者はもちろん、その上司に対しても懲戒処分や民事的な損害賠償請求、あるいは慰謝料請求がなされる場合があります。
前記のパワハラの類型の箇所でも触れましたが、パワハラの加害者やその周囲の人々にはパワハラを行っているという自覚がなく、指導と思い込んでいるケースが多いので、トラブルが複雑化することが多いのです。
パワハラを放置すると、経営陣への法的責任やその訴訟に関わるコストだけでなく、従業員の健康被害、職場の生産性低下による損失が生じますし、
環境の悪化した職場を嫌って優秀な人材が流出するというおそれもあります。
2007年には、鬱と労働環境との因果関係を認定する判決が下され、2009年には労働災害基準に「嫌がらせ」や「暴行」が追加されています。職場でのパワハラを根絶し、パワハラが起きない職場環境を作ることは、現代における企業経営者にとって必須の状況です。
また、2019年5月29日の参議院本会議で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律等」が可決され、パワーハラスメント防止法が成立しました。施行時期は、早ければ、大企業が2020年4月、中小企業が2022年の4月となる見込みです。
職場においてパワハラを防止することは時代の趨勢なのです。

③ 企業におけるパワハラ防止対策

企業においてパワハラ防止策としてどのような体制作りが必要でしょうか。
・相談窓口を設置し、パワハラの被害者が声を上げやすい環境を作る。
・パワハラの相談があった場合、社内で適切な調査を行い、パワハラかどうかの判断をし、配置転換や加害者への懲戒処分を検討する。
・管理職を研究会(セミナー)に参加させ、パワハラに対する認識を深めさせる。
・就業規則にパワハラの定義を盛り込み、従業員に周知させ、違反した場合には懲戒処分を行う等の規定を設ける。
等があげられます。
厚生労働省のアンケートでは、約8割の企業が相談窓口を企業内に設置し、6割の企業が就業規則にパワハラ対策を盛り込んでいるそうです。
この数字が大きいと感じるか少ないと感じるか、感じ方は様々だと思いますが、時代の趨勢は企業がパワハラ防止策を講じるのが常識となっています。
また、パワーハラスメント防止法が既に成立し、その施行日も遠くないことから、まだパワハラ防止策を講じてらっしゃらない企業経営者の方は、早急に手配をなさることをお勧めいたします。
吉本興業の一連のトラブルを他山の石とし、同じ過ちを犯すことのないよう、対処する必要があります。
ぜひ、その際には、労働法務に詳しい弁護士をご活用下さい。
就業規則に必要な規定を盛り込むことはもちろん、企業経営者の方々や貴社の管理職の方々へのパワーハラスメントに関する研修・セミナーを開催することも可能です。これまでの判例の流れに併せ、最新の法令と判例を解説し、質疑応答も交えながら分かりやすく「パワハラ」について理解を深めて頂けるよう実践的な研修・セミナーを行います。
また、豊富な労務管理の経験を活かして、パワハラの被害にあった方が気軽に相談できる体制作りのアドバイスも致します。すでに相談窓口を設けていらっしゃる他社の取り組みを紹介や、貴社の規模や特性にあった相談窓口の設置についてのご相談に対応いたします。
パワハラの訴えがあった場合には、被害者と加害者双方から事情を適切に聴き取り、その実情を正確に把握することが必要です。しかし、プライバシーにも関わってくることですから、「同じ会社の人には話しにくい」等、聴き取り調査が進まない場合もあります。
そこで、社外の第三者である弁護士をご利用頂ければ、そのような聴き取り調査にも協力が可能ですし、聴き取った内容から「その行為がパワハラに当たるのかどうか」を判断し、状況にふさわしい適切な措置や再発防止策についてもアドバイスが可能です。
企業内でのパワハラ対策・対応に、是非、弁護士の活用をご検討下さい。企業経営者の方々の負担軽減と貴社におけるパワハラ防止体制の構築についてお役に立てると自負しております。

④ コンプライアンスとは

パワーハラスメントの防止と併せて、今、多くの企業において対策を講じる必要があるのが「社内のコンプライアンス体制の構築」です。
「コンプライアンス」という言葉をあちこちで耳にしますが、漠然と「法令遵守」のことであろうと認識するにとどまり、正確な意味をよく知らない方も多いのではないかと思います。 コンプライアンス=法令遵守なのですが、今日ではこれは狭義の意味として解されており、現在は法令遵守にとどまらず、法令を守ることは当然のこととして、就業規則やマニュアルといった社内規程や、企業倫理・社会規範を守ることも「コンプライアンス」に含まれます。
これは社会全体が企業に対して公正かつ適切な行動とモラルを求めていることの表れであり、現代社会において消費者や一般市民の信頼を獲得するために、企業内にコンプライアンス体制を作り上げることは必要不可欠な取組みなのです。

⑤ コンプライアンス違反を放置するとどうなるのか

コンプライアンス違反として多く見られるものとしては
・不正経理(粉飾決済や脱税)
・製品に関する偽装(データ偽装や産地偽装)
・情報管理(顧客情報の流出)
・不適切な労務管理
があげられます。
具体例として、不正経理としてはライブドアの事件、データ偽装は日産自動車の事件、顧客情報の流出としてはベネッセコーポレーションの事件、不適切な労務管理としては吉本興業の一連の騒動などが記憶に新しいと思います。いずれの事件においても、
・企業イメージやブランドの甚大な毀損
・司法機関や行政機関からの処罰や処分
・顧客や株主からの訴訟や損害賠償請求
・企業のみならず、コンプライアンス違反に関わった責任者・当事者への懲罰や損害賠償請求
といったリスクが発生し、企業の存亡に関わる事態となっています。
現代社会においては、小さなコンプライアンス違反であっても、マスコミにリークされて社会的に問題化する、ネットで情報が拡散して「炎上」するなど、小さな火種が会社を滅ぼす大火につながる恐れがあるのです。

⑥ コンプライアンス体制の構築とそのメリット

コンプライアンス体制の構築により、コンプライアンス違反などの問題が社内で発生した場合の早期発見、適切な対応が可能になります。また、コンプライアンス体制を構築し、管理することによって、問題発生の防止にもつながります。
その結果、企業の社会的信用が向上し、企業イメージやブランドの価値も向上するのです。実際、昨今の投資家は、企業の財務状況や成長性などと併せて、コンプライアンス評価も投資の際に参考にしており、コンプライアンス体制が整っていて、社会貢献に積極的で、社会的責任を重視している会社を高く評価する傾向があります。
コンプライアンスの問題と経営の問題は別の観点だとの見方もありますが、現代では社会的要請に応えることは、企業の収益の確保にも関わるので、重要な経営上の問題だとされています。コンプライアンス管理が外部的には企業の経営上の収益にも影響を与え、また、内部的にも、労働環境の整備につながるので、社員のモチベーションや生産性の向上に影響を与えます。
コンプライアンス違反はなぜ生じるのかというと、経営や業務遂行において、倫理観が欠如していることや、社会的規範を意識しないことにより生じるといえます。
つまり、「今までやってきたから、これからも大丈夫」というなれ合いの中で業務を行うことにより、自浄作用や内部監査の機能が働かなくなっていることが大きな原因の一つとしてあげられます。
そこで、外部からの視点を持つことがコンプライアンス違反への対策としてあげられます。「会社の常識」が「社会の非常識」ということを公平な第三者の目から指摘し、なれ合いの状況を改善することが必要です。
外部からの視点の一つとして、弁護士をご活用頂ければコンプライアンス体制作りに最新の法令や判例の知識を生かしたアドバイスが可能です。
また、経営陣や社員の方々へのコンプライアンスに関する研修など教育・啓蒙活動のお役に立ちます。貴社のコンプライアンス体制作り、コンプライアンス管理に「外部の眼」として、是非、弁護士をご活用下さい。

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当事務所はハラスメント対応窓口のサポートを月額3.3万円の顧問プランより承っております。

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