団交に関する、録音・録画・議事録の必要性

・合同労組・ユニオンが介入する労働紛争を予防するには

・合同労組・ユニオンの介入を招いてしまった場合の団体交渉の流れ

・録画・録音の必要性

・議事録の作成は必要か

・合同労組・ユニオンが介入する労働紛争を予防するには

合同労組・ユニオンが介入した労働紛争の原因を分析すると、「会社側の労働法違反」、「経営者の労働法への無理解」が原因となって合同労組・ユニオンの介入を招いてしまったケースが多数見受けられます。また、それらの多くの企業で、業績悪化や金銭的な労働条件の悪化、労働時間・配転等の非金銭的な労働条件の悪化が背景にあることがうかがえます。

つまり、経営者が労働法の理解を深め、労働法違反の事実を作らないようにすることが、何よりも、合同労組・ユニオンの介入を予防する有効な手立てとなるのです。

弁護士は、訴訟になったときにだけ活用するものではありません。労働法務に詳しい弁護士を紛争の予防の段階で活用することが、労使双方にとって紛争の発生を防ぎ、より良い労働環境での生産性向上にもつながります。

・合同労組・ユニオンの介入を招いてしまった場合の団体交渉の流れ

万一、合同労組・ユニオンから団体交渉の申入れを受けてしまった場合の流れを説明します。

※は団交を申し入れられた事業主側が対応する場合の注意事項です。

「団体交渉申入書」等の通知書がファクスや郵便で届く

※慌てて回答しない。

まずは、日時・場所を検討し、時間的猶予や落ち着いて話せる場所の申し入れを労組側にする。

労組側の提示した日時や場所で行わなくてはならないわけではないので、組合の事務所や社内は避け、公共の会議室などを利用する方がよい。

日時も、十分な準備ができるよう、時間的猶予を申入れることも可能。

 会社の方針、方向性の検討

※紛争が裁判等の法的手続に持ち込まれたときの見通しを立てる。

紛争の社内への影響を検討する。

相手方の組合はどのような方針か分析する。

交渉の方向性を最初に決め、それに沿った対応をすることが必要。

場当たり的な対応は避ける。

労働法務に詳しい弁護士や社労士の活用をお勧めします。

 回答書の作成・送付

※日時・場所を調整する。

時間は長くても2時間程度とする旨組合側に伝える。

議題は事前に明確にしておき、限られた時間内で密度の濃い、建設的な話し合いができるよう調整する。

「荒れた団交」にしないためにも、出席者数を一定数に制限する提案も有効。

この段階で、録音について申入れをしておくとよい。

 団交までの事前準備

※議題とされた事項についての調査・確認を行う。

 初回の団交

※初回は組合側の要求事項をよく聴き取り、2回目以降に備える場だと認識して対応する。

紛争解決の有効な手段であると捉え、前向きに誠実な対応をすることが大切。

・要求は何か

・応じられる要求か

・応じられない場合、その根拠は

・応じられる範囲

威嚇目的の野次や怒号が飛び交う場になることも多いので、あらかじめ録音しておくことを提案しておくと、一定の抑止力になります。

交渉を有利に進めるためにも、労働法務に詳しい弁護士の同席をお勧めします。

 第2回以降の団交

※野次や怒号がとびかう荒れた団交になった場合、正常な交渉を行える状況ではないと打ち切ることも可能。その後、第三者が入ってくれる都道府県労働委員会のあっせん手続を申請することも有効です。

 合意の成立、または交渉打切り

※合意が成立した場合、必ず労働者個人との間で「合意書」等の書面を作成すること。

労働組合と事業主の合意に基づく署名・押印がなされた書面を作成すると、「労働協約」になり、事業主と労働組合の組合員を直接規律するとことになる(就業規則や労働契約よりも強い効力を有する)ので、安易な作成は避けるべきです。

・録画・録音の必要性について

団体交渉の際の録音については、「言った」、「言わない」の水掛け論になるのを防ぐためにも、また、団交の場が「荒れる」のを抑止するためにも、事前に「回答書」を送付する際に「録音をする」旨申入れをした上で、録音をすることをお勧めいたします(労組側の了承は不要です)。

また、労組側からも録音の要求があれば、双方で録音をとる形にした方が望ましいです。これは、当方が録音をして、データを労組側に渡すことにした場合に、労組側からの「データの改ざんをしている」等のクレームを避けるためです。

他方、録画に関しては、必要以上に当事者が委縮してしまい、自由な議論を妨げる恐れがあるので、労組側から録画の申し入れがあっても拒否した方が良いと考えます。

平穏な状況で団交が行われた、労使双方が自由な発言をし、有意義な交渉が行われたことを後日証明するためには、「録音」で十分目的を果たせます。

些細な言動がネットに流出して、「炎上」するご時世です。団交の模様が「音声データ」で流出するのと、「画像データ」で流出するのと、どちらの影響が大きいかを想像してみても、「録画」をすることは避けた方が無難です。

・議事録の作成の必要性

録音を行うことと同様に、団交の詳細について議事録を作成して、記録をとっておくことは重要です。

録音を行う目的は、団交内容の記録をとることよりも、「荒れた団交」になることを予防することや、後日、スムーズに団交が行われたことを証明することにウエイトが置かれています。

議事録の作成の目的は、具体的にどのような議論がなされたかを記録することに主眼が置かれます。つまり音声でデータが残る録音より、文字でデータが残る議事録の方が、どのような議論がなされたのか後日把握するのに適切であり、議事録をもとに、その後の交渉をどのように行なっていくのか、その後の対策を練る場合にも有用です。

議事録に関しましても、録音と同様に、労使双方で各々作成すればよく、労使双方で共通の議事録の作成は、かえって紛争の火種ともなりますので、避けた方がよいでしょう。

また、安易に労使で書面に合意をした場合、労働協約としての効力を生じさせる恐れもありますので、やはり、労使別々の議事録を各自の責任で作成させたほうがよいと考えます。

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